厳密にいうと、お子さんは歯槽のうろうではなく、歯ぐきの炎症だけにとどまる歯肉炎の状態であることがほとんどです。ここでは、分かりやすく子どもの歯槽のうろうとしました。
お子様の歯磨きはブラッシングが不十分だったと気づかず、気づいたら子どもが歯肉炎になっていたなんてこともあります。以下の症状が見られたら歯肉炎かもしれません。
- 硬いものを噛んだり、歯磨きをすると歯茎から出血する
- 歯肉のフチが赤く丸みを帯びて膨らんでいたり、触るとブヨブヨしている
健康的な歯茎は、薄ピンク色で引き締まっていて、歯と歯の間が綺麗な三角形をしています。一方、歯肉炎の歯茎は全体的にブヨブヨ腫れているのが特徴的です。
子供の歯肉炎は大きく分けると、次の3つになります。
- 萌出性歯肉炎
- 不潔性歯肉炎
- 侵襲性歯周炎
萌出性歯肉炎
萌出性歯肉炎とは、歯が萌えてくるときに生じる、歯肉炎のことを指します。
よく見られるのは、6歳前後に、大人の歯(第一大臼歯)が奥から生えてくる途中で、その周りの歯ぐきが痛いことがあります。歯が萌出することによって治っていくことが多いですが、免疫力が低下しているとさらに腫れたり痛くなったりすることがあります。(歯冠周囲炎)
原因
子供が乳歯や永久歯を萌出(生え始める)する際に見られます。歯が歯茎を押し上げて出てくる過程で、歯茎に炎症が起こりやすくなります。この時、歯磨きが十分にできていないと、細菌がたまりやすくなり、炎症がさらに悪化することがあります。
処置
萌出性歯肉炎の処置としては、まず口の中を清潔に保つことが重要です。歯が生えかけている部分を優しく磨き、プラークや細菌を取り除くよう心がけます。また、歯茎が痛んでいる場合は、刺激を与えないように注意し、必要であれば歯科医に相談して適切なケアを行います。通常、歯が完全に生え揃うとともに炎症は自然に治まりますが、炎症が続く場合は専門的な治療が必要になることがあります。
【参考記事】
▶︎6歳臼歯の色が変?
歯の成長の最終段階に、「石灰化」という時期があります。その時期に何らかの障害を受けると、低石灰化が起きる場合があります。
不潔性歯肉炎
最も一般的な歯肉炎です。虫歯を併発することもあります。
不潔性歯肉炎の原因
ハブラシが足りなかったり、ダラダラと食事やジュースをとっていたりすることでおこる歯肉炎です。
歯磨きが不十分だと、口の中の細菌が増え、歯茎にできた傷から感染してしまうことが原因です。
処置
不潔性歯肉炎の処置は、まず丁寧に歯磨きを行い、歯についたプラークをしっかり取り除くことです。歯磨きだけでなく、歯石がある場合は歯科医でのクリーニングも必要です。適切な歯磨きと定期的な歯科検診を行うことで、多くの場合は歯肉炎を治すことができます。また、子供には歯磨きの正しい方法を教え、力加減に注意するよう指導することが重要です。
侵襲性歯周炎
歯周炎は小児にみられることはまれです。いわゆる「歯槽のうろう」は中年以降に発症します。
一方で、10代後半から20代前半にかけて発症し、数年で急速に進行するタイプの歯周炎があります。これを「侵襲性歯周炎」といいます。歯の表面に歯の汚れ(プラーク)があまり付いておらず、歯ぐきの炎症も軽度であるにもかかわらず、歯の動揺が急激に生じるなど、悪化のスピードが速い歯周炎のことを指します。
原因
歯の汚れであるプラーク中のA.actinomycetemcomitansやP.gingivalisの存在比率が高いと言われています。
処置
歯ぐきの基本検査とともに、原因菌の同定を行います。原因菌の同定は一般的な歯医者さんでは行うことができません。そして、歯ぐきの治療を徹底的に行います。歯周病についての教育やハブラシの仕方、フロスの仕方といった指導を行います。症例によっては、歯周病の専門医の先生へ紹介する場合もあります。自分でのお口の管理と、定期的な歯医者さんへの通院が必要です。
遺伝的なものもありますが、多くは原因不明です。家族内で発症することがあります。全身的な問題はありません。
かかりつけ歯科医のための小児歯科ガイドブック(医歯薬出版)参照