どうして虫歯になるの?

原因は一つではありません。だから、対策が必要なのです。
虫歯の要因として、歯医者の世界でもっとも有名なものに、「カイスの輪」という概念があります。
アメリカのカイスという学者が、虫歯の要因として、①歯の質、②食べ物(特に砂糖)、③虫歯菌(歯垢)を挙げています。
この3つがそろったときに、虫歯が発生するとして、「カイスの輪」と呼ばれています。 虫歯の予防には、この3つの要因(+で「時間」も入ります)に、同時に働きかけることが効果的です。

カイスの輪 一部改変

虫歯のリスクには

(1)唾液の分泌量
(2)唾液の緩衝能
(3)唾液中の浮遊細菌数(ミュータンス菌Mutans streptococcusラクトバチラス菌Lactobacillus
が密接に関係しています。

(1)唾液分泌量の測定
唾液は安静時あるいは刺激時に採取します。
成人における正常な安静時分泌量は、0.3ml~0.5ml/分、刺激時分泌量は、1ml~2ml/分です。

刺激時唾液分泌量が0.7ml/分以下の場合には、虫歯のリスクが高く、0.1ml/分以下の場合は重度な口腔乾燥症と言えます。

(2)唾液の緩衝能(中和する力)
唾液の緩衝能と pH は、主に炭酸/重炭酸塩のシステムによって調整されています。
初期の歯の汚れ(プラーク)の pH は唾液の pHと緩衝能を反映する傾向があるため、唾液 pHが低い場合にはラクトバチラス菌、ミュータンス菌、カンジダなどの好酸性の微生物が発育しやすくなります。
正常な緩衝能は最終 pHが5~7で、4以下では緩衝能が低いと言えます。

(3)唾液中の浮遊細菌数
ミュータンス菌とラクトバチラス菌は、虫歯の原因細菌です。 
・ミュータンス菌が少ない場合は、虫歯のリスクが低いと言われています。
・ラクトバチラス菌の数は、砂糖の摂取や、あるいは穴が開いている虫歯があること、また不適合な修復物(詰め物やかぶせ物)が入っているといった、口の中がいかに虫歯になりやすい環境にあるかを示していると言われています。 

<ミュータンス菌とは>
ミュータンス菌は砂糖の含まれた食物を摂取すると、ショ糖を原料にして菌の産生する酵素により粘着性の多糖体(ムタン=グルカン)をつくります。グルカンが形成されると、歯の表面で他の口腔細菌とともに塊を形成し、これがプラークと呼ばれ虫歯が発症したり、進行したりする最大の原因となります。ショ糖のない環境では、歯の表面に付着する能力が、歯の表面に付く他の菌よりも低く、他の菌との結合や凝集はあまり見られないと言われています。

日本細菌学会http://jsbac.org/index.html
保存修復学21参考

虫歯のリスクファクター には

さらに、虫歯の要因を詳しくみていきましょう。
それぞれの患者様において虫歯のリスクファクターを把握し、それに基づいた治療法を選択することが最も重要です。
虫歯のリスクに関連する因子には、
1.社会生活
例えば経済的に困っている、歯医者さんの病気に関する知識が乏しい、兄弟でたくさん虫歯がある、進学や転職などによって生活のパターンが変化した、などがあります。
2.全身的既往歴
慢性疾患や全身の衰弱により、自己管理能力が低下し虫歯になりやすくなります。お薬の副作用として唾液の分泌を抑制してお口の中の乾燥症(いわゆるドライマウス)を引き起こす薬剤には、利尿剤、降圧剤、抗ヒスタミン剤、抗うつ剤など、多くのものがあります。
3.食習慣
飲食の回数や糖の濃度の高い食物の摂取が多い場合や、不規則な食生活の患者様はリスクが高くなります。
4.フッ化物の利用
フッ素イオンは歯の耐酸性強化(歯を溶かしにくくすることを強化)とともに虫歯の進行を遅らせます。フッ化物の利用には全身的応用と局所的応用があります 。全身的応用としての水道水へのフッ化物塗布は、東京都水道局のHPを確認する限り、積極的には行っていないようです。しかし、井戸水にはフッ素が高濃度で配合されている場合があり、そういった浄水場は一時停止しているとのことです。一方で、局所的応用には、フッ化物洗口、フッ化物配合の歯磨き粉あるいはフッ化物塗布があります。このようなフッ化物を全く利用していない人は虫歯のリスクが高いと言えます。
5.プラークコントロール
お口の中の清掃状態が悪いと虫歯のリスクは高いです。
6.唾液(つば)
唾液はお口の中を保護する重要な役割を持っています。服用している薬剤の副作用や頭頸部放射線治療に伴う唾液腺障害などによる唾液分泌量の減少は、お口の中の微生物の排出や食渣の除去などの自浄作用、酸の中和、初期の虫歯の再石灰化能を低下させます。
7.年齢
歯の萌出後間もない時期は、歯の表面のエナメル質という層の成熟が十分でなく、脱灰(歯がとけること:つまり虫歯)されやすいです。また歯の根元が露出してきてしまった高齢者も虫歯のリスクが高くなります。
8.臨床的徴候
以下のような所見がみられる患者様は一般的に虫歯のリスクが高いです。
・ 急性の新しい虫歯の存在
・歯が早期になくなっている
・前歯の虫歯がある
・多数の歯が治療されている
・繰り返し治療されている
・口呼吸
・叢生、捻転などの歯列不正
・矯正治療中
・入れ歯の使用中               「保存修復学21」 参考


その中でも、「3.食習慣」の意識づけも大切です。いつもお口に食べ物が入っている状態は虫歯になりやすいので、飲食する回数を減らしてあげる必要があります。この飲食とは、糖が入っているもの全てが当てはまります。例えば、キャンディー1個だけであったとしても、それは、飲食の回数にカウントされます。ただし、お水・お茶・ブラックコーヒー(ミルクやガムシロップなし)は飲食の回数には含まれません。

規則正しい食生活のポイント

1.食事の時間や回数を決める(食べていないという時間が必要です。)
2.寝る前に飲食しない(寝ている間は唾液の量が少なくなり、虫歯になりやすい。)
3.よく噛む(何回も噛むことで、唾液が多くでて食べかすを洗い流します。) 


歯の専門家として診療していると、上記の1から8までの、言葉の羅列が、すべてあてはまる!と実感します。
そして、まずは、歯みがきをするモチベーション!そして、つばがでること。おやつやジュースの回数が多いことも気をつけていただきたいです。そして、忙しく働かれている30代から50代までの男性は、忙しすぎて、自分のお口について無関心である方もたまにいらっしゃいます。ご自分のからだも大切にしてほしいと思っています。患者様全員に、いかに、口の中に興味・関心をもってもらえるか、をいつも真剣に考えています。

虫歯の段階には

CO~C1

エナメル質の虫歯

COとは、caries observation(要観察歯)のことで、
C1とは、歯の一番表層にあって生体内で最も硬い組織である、エナメル質に限局した虫歯のことを指す歯科用語です。

COは不透明な白斑と褐色斑、着色した裂溝があげられます。C1との違いは、軟化した明瞭な実質欠損を生じていないという点です。つまり、柔らかくなったボソボソの歯質があり、実際に歯に穴が開いているかどうか、という違いです。
COは、文字通り経過観察でOKです。再石灰化という現象によって、ちゃんとケアできればもう一度硬い歯に戻ると言われているからです。
しかし、C1は治療しなければなりません。一般的には、レジンと言われるプラスチック治療か、インレーと言われる詰め物の治療になります。

C2

象牙質の虫歯

C1の虫歯がさらに、象牙質というエナメル質より内側にある組織にひろがると、C2とよばれる虫歯になります。
象牙質まで虫歯になるので、冷たいものや甘いものでしみるといった症状が少しずつ出始めます。そして、ここまで進行している虫歯は削って、治療しなければいけません。口の中からは小さそうにみえたとしても、中は結構大きく虫歯になっています。
一般的には、レジンと言われるプラスチック治療か、インレーと言われる詰め物の治療、虫歯が大きければクラウンというかぶせ物の治療になることもあります。

C3

歯髄に達した虫歯

歯髄と呼ばれる、歯の神経にまで虫歯菌が達してしまうと、C3となります。
ここまで虫歯が大きくなると、冷たいものや熱いものでしみたり、何もしていなくてもズキズキ痛んだりするようになります。そうなると、ズキズキ痛んでいる歯の神経をとってあげる必要があります。歯医者として働いている私たちは、なるべく歯の神経を保存したいと考えています。歯の神経をとりたい歯医者なんていません。しかし、虫歯が大きくなってしまった以上、そうせざるを得ないのです。
経験上、歯に不調がでている場合は、歯の神経をとってあげないと不快症状が消えない場合が多いです。

治療としては、まず歯の神経の治療をします。いわゆる根管治療(歯内療法・歯の根っこの治療)と呼ばれるものです。その後、歯に土台を作り(支台築造処置)、かぶせ物をかぶせます。1本の歯に対して、少なくとも4-5回の治療回数が必要です。歯医者通院が長びく理由は、こういったことが必要になるからです。

C4

歯の根っこまで進行した虫歯

C3の虫歯の時期を、我慢して我慢して…と我慢していると痛みがなくなってきます。生きている歯の神経が死んでいくからです。それでも歯医者さんに行かずに放置していると、歯の根っこだけになります、それがC4です。
この段階では、歯の根っこも虫歯に感染しているため、歯を保存することが難しくなります。抜歯となる可能性が非常に高いです。
治療方法としては、根管治療か抜歯術となります。


当院の虫歯治療は、「 初期の虫歯はなるべく歯を削らない」方針をとっています。

なぜなら、虫歯をとり切って、歯を元のかめる状態に回復させるためには、どうしても歯の健康な一部分を余分に削らなければならないことが多くなるからです。虫歯が残っている、と心配になられるかもしれませんが、小さい虫歯の場合は、歯のお掃除さえしっかりできていればすぐに虫歯が大きくなるということはありません。一番大切なのは、日々の生活の中で、患者様ご自身でしっかり歯のお掃除をおこなっていただくことだと考えています。
それでも、虫歯の治療をしなければならないときもあります。虫歯がC1-C2程度であれば、以下のような治療になることが多いです。
・CR/レジン充填治療
・インレー修復治療

CR/レジン充填治療とは

歯医者さんで、何かを詰めて、青い色のライトでピカっとあてた経験はありませんか?
CRとは、コンポジットレジンの略称です。コンポジットレジンとは、合成樹脂(レジン)と無機フィラーとの複合材料です。要は歯科用のプラスチックです。歴史としては、1964年にアメリカ3M社より世界で初めてとなるコンポジットレジンが販売されて以降、急速に普及している治療法です。1980年代に入ると、アマルガム修復にとってかわり、さらに一部ではありますがインレー修復の代わりにも使用されるようになってきています。ミニマムインターベンション(Minimal Intervention)を可能にする虫歯治療です。

インレー修復治療とは

インレーとは、虫歯を全てとり、その削ってあいたすきまを「詰め物」と説明されるもので補う治療法になります。(「クラウン」(かぶせ物)とは違います。)基本的には、強度が求められる部位であったり、あるいはレジン充填でつめると適合が不良になったりする場合に選択される治療法です。インレーは、材料によって保険適応となるインレーと、保険適応にならない(自由診療)インレーがあります。

①保険適応のインレー
金銀パラジウム合金で作られたインレーや、レジンで作られたインレーが該当します。

②自由診療のインレー
 ジルコニアインレー

インレーを装着した後は、2次カリエス(もう一度虫歯)になりやすくなります。

一度虫歯になって、削ってしまうと、再び虫歯になりやすくなります。歯は、一番外側がエナメル質といって最も硬い層になります。エナメル質が失われていることと、歯とインレーにはどうしても境目が生じてしまうことから、再び虫歯になっていきます。この写真は、インレーを除去したときの写真です。インレーを外してみないと、インレーの下が黒く虫歯になっていることに気づくことができません。黒い歯質は、ボソボソで柔らかくなっており、虫歯でした。
ですから、小さい虫歯は、なるべく削りたくないのです。

2020年4月更新