入れ歯には
「部分的な入れ歯」「総入れ歯」かといった分け方と
「保険で作製した入れ歯」「自由診療(=自費治療)で作製した入れ歯 」かといった分け方があります。

保険の入れ歯

種類や材料は、出来栄えが少し制限されます。
したがって、審美的・機能的・付け心地をよりよくしたいといった場合は、自由診療である、軟性義歯や金属床義歯といった治療方法をご提案させていただくことになります。

保険の入れ歯のメリットとデメリット

◆メリット
保険診療費用で作製可能。

◆デメリット
ピンク色と白色のところがすべてプラスチック製であり、強度が弱い。強度を増すために、ある程度の厚みが必要となる。人によっては、オエっとなったり、しゃべりにくくなったりする。

自由診療の入れ歯

自費の入れ歯のメリットとデメリット

◆メリット
入れ歯の厚みがかなり薄い。異物感がかなり減る。熱を伝えやすい。強度がある。

◆デメリット
高価になる。場合によっては、入れ歯の修理が難しいこともある。

自由診療の入れ歯① 軟性義歯

少し柔らかめの素材を使用した入れ歯で、クラスプと呼ばれるバネがついていないタイプ。
軟性義歯は1-3本程度の少数歯だけ歯がない場合(特に、前歯)に効果的です。バネがないので、特に女性からは好評です。
ただし、入れ歯の修理ができません。

軟性義歯の費用70,000円(税別)

自由診療の入れ歯② 金属床義歯

歯ぐきに接する面のほとんどが、保険の入れ歯より薄い金属で覆われるため、付け心地がよいタイプ。
金属床義歯は、大きな入れ歯にも対応しています。なんといってもとても薄いので付け心地がとっても気持ちいいです。当院で作製する金属床義歯は、大部分の患者さまに20年以上快適に使用していただいています。

金属床義歯(コバルトクロム)の費用300,000円(税別)

▶︎金属床の金属フレームの設計

金属フレーム
金属フレーム

▶︎当院での金属床義歯を使用されている、実際の患者様の症例

2010年10月に上あごの金属床義歯を作製。左上の前歯部の修理を経て、現在(2021年1月)へ。ところどころ汚れはあるものの、10年経過し、良好である。

1994年6月に下あごの金属床義歯を作製。左下の小臼歯部の修理を経て、現在(2021年1月)へ。26年経過し良好である。

自由診療の入れ歯③アタッチメント義歯

アタッチメント義歯とは、雄雌の差し込み式になっている維持装置が、入れ歯とご自身の歯(場合によってはインプラント)に組み込まれている入れ歯のことです。入れ歯にアタッチメントを組み込むと、装置自体は目立たず、入れ歯が外れにくくなります。
保険診療でできる入れ歯にはこの概念はありませんので、自由診療となります。
アタッチメントには、(1)磁石(マグネット)や(2)ボールなどがあります。

▶︎マグネットの入れ歯とは

マグネットの入れ歯とは、歯科用語で、磁性アタッチメントデンチャー(磁石義歯、マグネットデンチャー)といわれています。
まず、マグネットの入れ歯についてご説明いたします。
磁性アタッチメントデンチャーとは、ご自分の歯の中に磁石をくっつけることができる金属(キーパー、磁性ステンレス)を入れ、相対する箇所の入れ歯には磁石を埋め込んで磁力で維持させる入れ歯のことです。クラスプと呼ばれる入れ歯のバネ(金具、留め具、針金)を使用しなくてもよいことが最大のメリットになります。
使用するのは小型磁石ですが、強力な吸着力があるため、安定性が高く、入れ歯がずれたりすることがなくなります。一方で、側方から大きな力がかかった場合は、外れて力を逃がし、歯の根っこにかかる負担を軽減できる、と一般的には言われています。

マグネットの入れ歯の一般的なメリットとデメリット

◆メリット
入れ歯のバネを使用せず、見た目を良くすることができる
入れ歯が落ちたりずれたりせず、安定している
無理な力が加わるとはずれ、歯の根っこに負荷をかけ過ぎない

◆デメリット
歯が少しでも残っていないとそもそもできない(インプラント支台であれば可能)
保険適用外の治療になるため、治療費が高額になる
入れ歯を装着したままMRI撮影をしたりMR室に入室すると、義歯が飛び出したりして危険である
MRI画像の金属アーチファクト(画像のゆがみ)により診断が困難になる。歯の中の金属を外さなければならなくなることがある。
金属アレルギーを起こす可能性がある(ネオジム磁石そのものではなく、磁石の表面に施されているメッキによっておこると考えられている)
ペースメーカーが埋め込まれているとできない

現在、当院ではマグネットの入れ歯は作製しておりません。
なぜならば、マグネットの入れ歯を入れてから2-3年は調子がいいのですが、5年くらい経過すると、歯の根っこそのものが弱ってきてしまうからです。

先ほどメリットの項目に、「歯の根っこに負荷をかけ過ぎない」とありましたが、実際の患者様の経過では、そうではない結果になることが多かったのです。歯の根っこが弱くなり歯を抜くことになったとしても、マグネットの入れ歯を修理すればある程度は使用できます。しかし、せっかく安くない自由診療の入れ歯を作ったのに、そのメリットを効果的に使い続けられないのでは、歯医者として患者様に申し訳ないと思います。
(ただし、この意見は、あくまで一個人としての見解です。マグネットの入れ歯を好んで行っている方もいらっしゃいます、治療に関しては様々な考え方があります。)

「磁性アタッチメントとMRI」
歯科用磁性アタッチメント装着時のMRI安全基準マニュアル

日本磁気歯科学会雑誌 21巻 1号 2012年 参考