虫歯はあなたの口からお子様に感染しています
虫歯は、風邪などのように人から人にうつる「感染症」です。生まれたばかりの赤ちゃんには虫歯の原因となる細菌(ミュータンス菌など)がいないため、虫歯にはなりません。また、ミュータンス菌に感染しても、口の中に定着するには「歯」が必要です。そのため、ミュータンス菌が定着するのは歯が萌出した後だと一般的には言われています。
時期としては、生後1歳7ヶ月から2歳7ヶ月の間(感染の窓)といわれており、この時期にミュータンス菌を口の中に多く持っているお母さんは感染源になるので要注意です。
また、多くの研究報告によると、早期に虫歯菌に感染するとその後に発症する虫歯の重症度が高くなります。したがって、虫歯菌への感染・定着時期を遅らせるだけでも、お子様の虫歯予防を楽にできます。特に、お母さん(母親)からの伝播に関しては、少なくとも2歳までは気をつけましょう。
正しい知識があれば、お子様への感染時期を遅らせることが可能です。
虫歯菌の感染対策
虫歯菌の感染対策には、次の3つの方法が効果的です。
1.感染源の虫歯菌を減少させる(特にお母さんのお口の中を清潔に保つ)
2.感染経路を遮断する(お子様と同じお箸やスプーンを共有しない)
3.宿主(こども)のショ糖摂取制限(ショ糖が存在すると虫歯菌の歯への定着が促進される)
①感染源の虫歯菌を減少させる
特にお母さんのお口の中を清潔に保つことが重要です。虫歯から大切なお子様を守るためには、まずはお母さん自身が、歯磨きを行い、そして歯医者さんでの健診・クリーニングを定期的に受けられることをお勧めします。
②感染経路を遮断する
虫歯からお子様を守る2つ目の手段は、「感染経路の遮断」です。
育児に追われて歯のケアを怠りがちになると、お母さんのお口の中には大量の虫歯菌が増殖してしまいます。この時期に「お母さんが口をつけたスプーンで離乳食をあげる」ことや、「お母さんが小さく噛みちぎった食べ物を与える」、「お子様にキスをする」などすることで、虫歯菌がお子様に感染します。 極論を言えば、上記のようなスキンシップを一切行わなければ感染経路を遮断でき、お子様が虫歯になる可能性を抑えることができます。しかし、このようなスキンシップはお子様への愛情表現として非常に大切な行為です。 それでは、安全にスキンシップを取れる方法はないのでしょうか?
キシリトールの活用です!
キシリトールの効果は、虫歯の原因となるミュータンス菌の性質をかえることができます。悪玉ミュータンス菌を善玉ミュータンス菌に変えることができ、虫歯になりにくいお口の環境を作ることができるのです。
そうすることにより、虫歯の原因となる悪玉ミュータンス菌がお母さんのお口からお子様に感染することを避けられます。
虫歯菌の感染経路はお母さんだけでなく、お父さんやおじいさん、おばあさんなども含まれます。ぜひ皆様でキシリトールを摂取して、お子様とスキンシップをいっぱい取ってあげてください。
③宿主(こども)のショ糖摂取制限
愛情表現として、お子様に甘いお菓子をあげる場合もあります。お子様のショ糖摂取制限は、言葉で言うほど簡単ではありません。
したがって、他のところで補ってあげる方が現実的ではないか、と私は感じています。
では、どうするのか?
1.フッ素塗布
2.シーラント填塞
3.キシリトールの活用
など、他の方法で歯そのものを強くしてあげたり、できることでカバーしていきたいと考えています。
フッ素塗布
「フッ素」で、歯の表面にあるエナメル質を強くします。乳歯や生えたての永久歯は、歯の成熟度が未熟で虫歯になりやすいのですが、フッ素を塗布することによって歯質を強化することができます。
シーラント填塞(てんそく)
歯のミゾは複雑で、歯みがきだけでは虫歯の予防が難しいです。特に、萌えたての6歳臼歯はミゾが深く、虫歯になりやすいです。シーラント填塞とは奥歯の噛む面のミゾをプラスチックで埋める虫歯予防処置のことです。使用する材料は虫歯治療の際に詰め物として使う「レジン」というものです。
実際のシーラント填塞の様子
歯医者さん用語で言うと、左下DEにシーラント填塞が施行されています。
(この写真の右端の2本の歯)
虫歯になりやすいお子様にはシーラント填塞のお話しをさせていただく場合があります。
キシリトールの活用
おじいちゃんおばあちゃんからお菓子をもらってしまったら、そのあとには「キシリトールのタブレット(ラムネ)を食べさせる」という方法もあります。愛情表現の一つとして「好きなお菓子等を買い与える」ということがあります。その愛情表現に対して断ることができない場合もありますよね。そんなときは、お菓子もあげていいけどキシリトールのタブレットも食べさせてね、と一言添えていただくのがおススメですよ。
「マイナス1歳」からはじめるむし歯予防 参考
仲井雪絵 著