最終更新日 2021.04.05

妊娠週数と歯科治療

妊娠自体は歯科治療の適応を制限されませんが、一般的には、安定期(16週~)の治療は可能です。
胎児への影響が懸念される妊娠初期は緊急性の高い歯科治療に限定することが勧められています。また、後期(28週~)の治療は可能ではありますが、ストレスによる早産防止のため、状態によっては応急処置にとどめた方がよい場合もあります。

X線撮影

歯科用のX線撮影は腹部からも離れており胎児への放射線の影響は無視できるレベルです。
さらに防護エプロンの着用で被ばく量を軽減できます。但し、X線撮影は必要最小限にとどめる必要があります。

歯科治療時の麻酔の影響

局所麻酔薬

妊娠中に局所麻酔薬を投与しても胎児への危険性はほとんどないと報告されています。

日常の歯科では、局所麻酔としてアドレナリン添加2%リドカイン (オーラ®注歯科用カートリッジ)、 あるいは、 フェリプレシン添加3%塩酸プロピトカイン(歯科用シタネストーオクタプレシン®)がよく使用されています。
これらの麻酔薬ならびに血管収縮薬は、通常使用量で催奇形性などの胎児への影響は問題なく、比較的安全であるとされています。
・ただし、妊娠4-7週の器官形成期には胎児の中枢神経や心臓などの重要な臓器が発生分化するため、たとえ安全とされる局所麻酔薬でも、 使用しない方がベターです。
・また、妊娠8-15週は口唇口蓋が閉鎖する時期であるため、 薬剤による催奇形性が懸念されます。
したがって、これら妊娠初期には、歯科における局所麻酔は原則的には控えたほうが望ましいでしょう。

やはり妊婦に対する歯科治療は安定期(妊娠5-7ヶ月)が望ましく、この時期なら一般の方と同じように治療が可能です。
歯科麻酔薬も通常の使用量であれば、流産などのトラブルを引き起こすとは考えにくいです。麻酔をしないことによる疼痛の増悪やストレスによって分泌される内因性カテコールアミンが妊婦の循環系や代謝系に悪影響を与える場合もあるので、治療や麻酔の必要性と安全性を十分に確認し、局所麻酔下において処置を受けることをおススメします。 

投薬

原則として投薬は控えます。ただし投薬しないことで母体に悪い影響があると考えられる場合には、胎児への影響が少ないとされる鎮痛剤や抗菌剤を必要最小限で使用することもあります。

抗菌剤

抗生物質のなかでも、

  • ペニシリン系薬物は脂溶性が低くイオン化しやすい
  • セフェム系は臍帯や授乳中に分泌されにくく胎児・乳児への移行が少ない
  • マクロライド系は上記の2つより組織移行性が高い

などといった特徴があります。

マクロライド系薬剤である、ジスロマックのインタビューフォームによると、「妊婦への投与:妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」と記載されており、胎児への薬剤の移行濃度が高く、効果も持続するため使用には注意が必要です。

したがって、ペニシリン系薬剤やセフェム系薬剤が比較的安心して使用できます。マクロライド系薬剤は、メリットが上回るときに使用するとよいでしょう。

「妊産婦と歯科治療」

デンタルダイヤモンド社参照

X線撮影や、歯科治療・投薬などいずれにおいても、患者さんと十分相談したうえで治療を行うことが重要になります。