最終更新日 2024.08.05
「歯の根っこに膿がたまっている」とは、歯医者さん用語で「根尖性歯周炎」(こんせんせいししゅうえん・根尖病巣)と呼ばれる状態のことです。
このページでは歯茎に膿がたまっている根尖性歯周炎の実際の画像を紹介し、原因や症状、治療法について解説しています。
根尖性歯周炎とは
根尖性歯周炎とは、歯の神経を除去したあとにその神経のあったところに細菌が感染して起こる病態のことです。
目に見えない歯ぐきの中で炎症が生じており、一般の方にはなかなか説明が難しい病態です。レントゲン撮影によって大まかな推測が可能です。
歯の根っこの膿はこう映る
レントゲン画像
画像はクリックで拡大して見られます
レントゲン画像では、右下6番の歯の根っこと左下の6番の歯の根っこから、境目がはっきりしている透過像(黒くぬけているところ)がみえます。
これらが根尖性歯周炎と呼ばれる病態のレントゲン像になります。
その病気のある歯を抜歯すると、、、
実際の、歯の根っこの膿
歯の根っこに何かプニプニしたものがついてきました。
これが、「根尖病巣(根っこにうみがたまる状態)(根尖性歯周炎)(歯根嚢胞)」と呼ばれるものの正体です。
歯根嚢胞は、歯とともにきれいに袋状に摘出できることはまれです。通常は摘出するときにボソボソにちぎれてしまうことが多く、袋状にきれいに摘出できません。
目で見ると分かりやすいですよね。
厳密なことを言うと、根尖性歯周炎と歯根嚢胞という病態は実際は異なります。ただ、説明が難しいので、だいたい同じというイメージで大丈夫です。
実際は、根尖病変は膿の塊ではありません。不良肉芽組織と呼ばれるぶよぶよのものです。
CTでみるとどう見える?
どうして歯の根っこに膿がたまるのか
答えは「細菌に感染したから」です。
この病気は根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と言います。歯周炎の一種です。
歯の中(目では見えない奥)にまで細菌が入り込んだ(感染した)ため、人間の防御機能が働き、細菌を殺そうとして白血球が集まります。歯の周りにある歯槽骨を溶かしてでも、細菌と戦います。硬組織である骨がなくなるので、レントゲンで黒くうつり(レントゲン透過像)、病気が発覚するわけです。膿は、細菌と白血球が戦ったからできるのです。
なんで細菌に感染してしまうのか?
細菌に感染してしまった原因として考えられるのは
- 深い大きな虫歯
- 治療後の劣化
- 歯の破折
- 生きていた神経がなんらかの原因によって死んでしまった
からなんですね。
①深い大きな虫歯
虫歯が大きいと、細菌が歯の神経に感染するため、歯の根っこまでバイキンまみれになります。
②治療後の劣化
神経の治療をした歯では、すこしずつ治療した歯の材料の劣化が進んだり、歯と治療したかぶせ物との境目が大きくなってきたりして、細菌がどんどん歯の深部に侵入してしまいます。
③歯の破折
神経のない歯は、痛みを感じる神経で守られていませんので、とても弱くてもろい歯と言えます。噛んだ時にバキっとわれてしまうことがあります。また、歯にヒビが入ることもあります。そうすると、細菌がどんどん侵入します。
④生きていた神経がなんらかの原因によって死んでしまった
インレーといった詰め物やレジン充填を行ったあとに、その時は生きていた(だろう)神経が時間とともに徐々に死んでしまうことがあります。原因は分かっていないことも多いのですが、治療した歯の窩洞が深かった(虫歯が大きかった)からだ、と言われています。
神経が生きている歯を削る場合にはしみて痛くてたまらないので必ず麻酔をしてから歯の治療をします。
一方で、このようにレントゲンで歯の根っこに病気がみえる歯は、麻酔をせずに治療をします。神経がしんでいるということが想定できるからです。このような歯は、歯の神経まで歯を切削する機械が到達すると、独特の嫌なくさいにおいがします。歯の根っこにすみつく細菌が発する臭いです。そして、予想通り削っても全く痛くないのです。
こうなった歯は、患者さん自身に自覚症状がある(痛かった)場合もありますし、自覚症状が全くない場合もあります。歯医者として歯科医学は奥が深いなと感じる瞬間です。
歯の根っこに膿が溜まった時の症状
歯に膿がたまった時のよくある症状は
- 自覚症状はない
- 浮いた感じがする
- フィステル(:fistel、口内炎のようなもの)ができる
- 噛むと痛い
- 歯の周りが腫れる
- 痛い
- 頭痛(上顎)
といったものがあります。基本的には無症状のことが多く、歯医者さんでレントゲンをとって、はじめて指摘されるという方も多いです。
根尖性歯周炎の病態にも、「急性期」と「慢性期」があります。
したがって、「慢性期」である根尖性歯周炎は、自覚症状はほとんどありません。しかし、ストレスがたまったり疲れたりして、ご自身の免疫力が低下すると、「急性期」となり、痛みが出現します。そして歯医者さんにかかり、歯の根っこにうみがたまっているね、と診断されるわけです。
歯医者さんでレントゲンを撮影するのは、骨という硬組織が溶かされるために、白黒の画像として視覚的に分かりやすく判別できるからです。肉眼では、歯ぐきの中の変化は分かりませんからね。レントゲン画像では、歯の根っこの先に丸く黒い透過像(影)という像としてうつります。黒い影は骨が溶けてなくなっているためで、その部分には膿や不良肉芽(ブヨブヨの塊)がたまっているのです。
さらに頭痛もあったら
上あごの歯が痛くて頭痛もする場合は、根尖性歯周炎から副鼻腔炎(上顎洞炎)を併発している可能性があります。
上顎洞というお鼻の空洞は、上あごの奥歯の根っこに近接しているからです。頭痛の他にも、頬っぺたの痛み、発赤が出現することが多いです。
歯の根っこの膿の治療について
治療としては
- 根管治療(歯の神経の治療:根っこの治療)
- 外科的な摘出(歯根端切除術)
- かみ合わせの調整+抗生物質の投与
- 抜歯
があります。
1.根管治療 (根っこの治療)
根管治療とは、歯の根っこの中を薬などできれいに消毒し、バイキンをゼロにした上で、ガッタパーチャポイントとよばれる永久的に入れておける封鎖性のよい材料で封鎖する治療のことです。
根管治療(歯の神経の治療)は、実際には、難しいのです。なぜならば、
1.歯の解剖の複雑さ
2.直視できない
3.狭くて暗い
4.歯の根っこや底に穴があいてしまうリスク
等、あげたらキリがありません。(汗)
1.歯の解剖の複雑さ
歯の根っこには神経の管(くだ)というものがあります。その神経の管はさらに枝分かれしたりしています。
奥歯に関しては、歯(歯冠)はひとつであっても、歯の根っこは2つであったり3つであったりします。
さらに、歯ひとつひとつでも違いがあり、人それぞれにおいても個性があります。このように歯の根っこってとても複雑なのです。さらに、歯の根っこの管ごとにひとつひとつきれいに治療していくため、時間がかかり大変になります。特に奥歯は、大変。。。
2.歯の根っこは直視できない
歯の根っこは歯ぐきに覆われていて、直接根っこを見ることができません。根っこの長さを直接確認できないため、そのかわりに用いられる器械として有益なのが、根管長測定器といわれる器械です。根っこの長さを精密に測定することで治療精度が向上し、歯の根っこに細菌・膿がつきにくくなります。そうすると、歯が長持ちするのです。
3.歯の根っこは狭くて暗い
歯の根っこは、狭くて光が届きにくいから見えない!!とにかく暗いので、歯の深部が見えにくい。
尾張旭市の歯医者 にしお歯科では、自由診療となるマイクロスコープ治療等による精密な根管治療(歯の根っこの治療)は行っておりません。保険診療の範囲内での治療をおこなっております。
したがって、根管治療が患者様にとって有益ではないと判断した場合は、かみ合わせの調整と抗生物質(化膿止め:薬)を処方するといった方法をご提案しています。
2.かみ合わせの調整+抗生物質の投与
かみ合わせを調整し(咬合調整)、抗生物質の飲み薬で炎症を抑えます。「病気をチらす」と説明されたりするかもしれません。原因の病気は残っているので、再び腫れたりします。
根管治療が患者様にとって有益ではない場合というのは、具体的には、
①根尖性歯周炎が大きくなっており、根っこの治療をやり直しても改善できるか分からない
②破折している(歯の根っこが折れている)可能性が高い
③患者様が何回も歯医者さんに通院できない
といった場合などです。
もちろん、これらの病態であっても、自由診療で行う根管(歯内)治療の専門の歯医者の先生であれば治すことができるかもしれません。
3.外科的な摘出(歯根端切除術)
外科的に切り開いて、根っこのバイキンを取るという方法です。
基本的には、歯の根っこがきれいな状態になっている上で行うと効果的と言われている治療法になります。上部構造に自費の補綴物(セラミックのかぶせもの等)が入っていたりすると、この治療法を選択される場合もあります。また、部位によってはできない場合もあります。
【参考記事】
4.抜歯
「抜歯をするのも現実にはあり」です。
これはあくまで歯医者の一個人としての意見ですが、歯の根っこに膿がたまって痛いといった症状を繰り返しているのであれば、現実的には抜歯がおススメです。当院は精密根管治療をおこなっていませんので、一概に比較することはできませんが、根尖性歯周炎と診断した歯のなかには、歯の根っこの治療を開始してみると、「とてもじゃないけど治療して完治できる状態じゃないな」(歯質がボロボロすぎる)と感じることが多いです。
どんなに性能がよい機械を使用しても、結局、元となる歯自体がボロボロになってしまっていては治すことができません。
ですから、そもそも虫歯にならないように予防するといったことが大事になるわけです。
ご不明点がありましたらご説明いたしますので、遠慮なくお尋ねください。
【参考記事】