先週、公立陶生病院歯科口腔外科の服部先生の講演を聞く機会がありました。
「骨吸収抑制剤使用患者さんへの侵襲的治療」というタイトル(一部改変)でした。

骨を強くする薬と顎骨壊死

近年、骨を強くする薬の一種で、ビスフォスフォネート製剤と呼ばれる薬を飲んでいる方が、歯医者さんで抜歯するとその後の治りが悪い症例があることが報告されてきました。いわゆる、顎骨壊死といわれる病態です。
その、最新の知見では、

  • 抜歯の時に骨を強くする薬を休む期間はいらないのではないか
  • 骨を強くする薬をのんでいる場合で、重度の歯槽膿漏である歯は、「顎骨壊死にならないように抜歯しない」ではなく、「抜歯」しておく方がよさそう
  • 抜歯の前やあとには、抗生剤を飲むようにしよう

というお話しでした。
要するに、骨を強くする薬を飲んでいても、そのままお薬は続けたまま歯を抜歯しましょう、という方向のようです。
抜歯自体が、顎骨壊死を引き起こすのではなく、むしろ感染する可能性のある(いわゆる悪い)歯があること自体にリスクがあるのではないか、とおっしゃっていました。

とはいえ、骨を強くするお薬をのんでいる方は心配だと思いますので、大きな病院で抜歯してもらうのでもよいと思います。

骨を強くする薬を飲む前に歯医者さんへ

骨粗しょう症の治療やがんの治療で、骨を強くする薬(ビスフォスフォネート製剤)を飲むことになったら、まずは歯医者さんで悪い歯がないかチェックしてもらいましょう。
そして、悪いと診断された歯は、お薬を飲む前に、抜歯してしまいましょう。

そして、骨を強くするお薬を飲み始めたら、定期的に歯医者さんを受診し、お口の中がいい状態でいられるようにしましょう。

外科治療①抜歯(口腔外科)と全身疾患について

当院では、口腔外科出身の歯医者が在籍しておりますので、外科処置も安全に施行できます。また、インプラント治療も行っています。

参考文献

ポジションペーパー (2016) では MRONJ が発症したら治療が完了するまでの間、可能なら骨吸収抑制薬を休薬することが推奨されている
米田俊之, 萩野 浩, 他:骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016.
https://www.jsoms.or.jp/medical/wp-content/uploads/2015/08/position_paper2016.

2018年11月に開催された第63回(公社)日本口腔外科学会総会・学術大会のなかで(公社)日本口腔外科学会と(一社)日本骨粗鬆症学会の合同シンポジウムが企画されたが、同シンポジウムの1つの方向として低用量骨吸収抑制薬投与患者に抜歯を行う際には骨吸収抑制薬は休薬しないことが確認された。

薬剤関連顎骨壊死の治療と予防に関する最新の知見:多施設共同臨床研究の結果より 梅田正博