最終更新日 2023.07.01

前歯が抜けたが、はえてこない

上の前歯がはえていません(両側上顎1番の未萌出)

「こどもの前歯が抜けて、大人の歯がなかなか生えてこないけど大丈夫?」という質問です。このままでいいのかしら?と心配になりますよね。

原因と対処法① 自然に萌出するのを待つ

上顎の1番と言われる中切歯(大人の歯)がはえてこない場合がもっとも多いです。たいていは、様子を見ていただいているうちに自然と生えてきますので心配しすぎなくてもよいです。
様々な意見がありますが、一般的には3か月様子を見てはえてこなかったら、歯医者さんで調べてられることをお勧めします。

追記)
私の個人的な意見ですが、歯がはえてこないと悪い習慣(舌を歯のないところに入れて遊んでしまう癖)ができてしまい、歯並びに悪い影響がでる可能性があるので、できれば1~2か月以上歯が生えてこなかったら歯医者さんで開窓術(歯を出してあげる小手術)をしてもらうことをおススメしています。

原因と対処法② 歯ぐきが硬い

子どもの歯が抜けてから、半年以上歯が生えてこない場合もあります。そんな時は、歯ぐきが硬すぎて大人の歯が出られないことが挙げられます。この場合は歯医者さんで麻酔を行い、レーザー照射やメスで開窓術をおこなうことが望ましいでしょう。

また、たまに6歳臼歯と呼ばれる大人の歯が1本だけはえてこない子もいます。同じ顎の同名歯(上あごの6歳臼歯同士や、下あごの6歳臼歯同士)は、通常同じ時期に萌出してきます。したがって、どちらか一方だけはえてきていないというのは何か問題があると判断します。特に、一方の6歳臼歯が咬合平面まで萌出(=しっかり歯がはえているということ)していて、他方の6歳臼歯が全くはえていない場合は、積極的に歯を出してあげることを提案しています。

6歳臼歯が全部はえていますか?

6歳臼歯は名前の通り、6歳ごろに萌出しますが、合計で4本生え揃うのが正常です。たまに、生えてきていない6歳臼歯に気づいていない場合があるので注意が必要です。 萌出…

原因と対処法③ 過剰歯や良性腫瘍(できもの)が大人の歯の上(か下)にある

CT像(上顎正中埋伏過剰歯)
デンタルX線像 上顎正中埋伏過剰歯 

過剰歯やできものがある場合は、歯医者さんで取り除いてもらわなければ、おそらく大人の歯は萌出できません。審美的にも歯抜けの状態が続くのはみっともないので、歯医者さんで摘出してもらいましょう。大人の歯がはえてきます。場合によっては矯正治療が必要になってしまうかもしれませんね。

こどもの歯の内側に大人の歯がはえてきた

左側下顎1番の萌出・左側下顎A残存の状態

「子どもの前歯がまだ生えている状態で、その内側に大人の歯が二重になって生えてきたけど大丈夫ですか?」という質問です。
ほとんどが下顎の前歯であることが多いです。

相談の多くは下顎の1番と言われる大人の歯にみられる症例が多いです。下顎の1番と言われる大人の歯の萌出経路が原因になります。自然に抜ければよいのですが、抜けない場合もあります。

原因は、大人の歯の位置が歯ぐきの中で正常な位置からずれてしまうことによります。子どもの歯は、はえかわる時期に合わせて根っこを短くしていきます。(乳歯の歯根吸収)根っこが短くなるので、子どもの歯はグラグラになって抜けていきます。大人の歯の萌出する位置が間違っていると乳歯の歯根吸収がおこらず、全くグラグラにならないということがあります。グラグラにならない場合は、歯医者さんでの抜歯が必要になることもあります。

乳歯が抜けたら、機能的に正常であれば(口呼吸をしていない、異常嚥下癖がない、等)舌からの力と唇からの力によって、大人の前歯は正常な位置にみちびかれます。

乳歯に重なって内側に生えてきた大人の歯は、乳歯が抜けると少しずつ前(外側)に移動してきます。しかし、乳歯が抜けたのに大人の歯が前(外側)に並ばないケース(通常は、叢生(ガタガタ))もあります。
これは、顎の発育が不十分なために、大人の歯の並ぶスペースを確保できていないからです。歯列矯正が必要となる場合もあります。歯医者さんに相談してみてください。

下の歯がとんでもないところからはえてきた

よく患者さんのお母さまから質問があります。こんなところからはえてきちゃった、とびっくりされて歯医者に来院されます。心配ですね。 下顎切歯(1番)の舌側萌出につい…

上の前歯がスキッパである

「はえてきた前歯の真ん中に隙間があって、矯正治療が必要ですか?」という質問です。6-7歳ごろに、上の真ん中の歯の間の隙間が広くあきすぎているのを心配されて歯医者を受診されます。

上顎の1番と言われる歯は、歯の解剖学的に「ハ」の字で萌出します。上の前歯では、歯と歯の間に隙間があるのは異常ではありません。小児歯科学の分野では、この時期を「みにくいあひるの子(ugly ducking stage)」(小児歯科学の教科書に、本当にこう記載されているのです。)と呼び、正常な発育であるといえます。
隙間があった前歯も、他の前歯や犬歯が生えてくると徐々に真ん中に寄ってきます。

小児歯科学(医歯薬出版)より

「みにくいあひるの子」は12歳頃まで

ただし、10-12歳ごろで犬歯(糸切り歯)が萌出し終わっても前歯の間にスキマがある場合は、異常ですので、歯医者さんを受診しましょう。

  • 上唇小帯が強直している(上の唇の真ん中からつながっているビロビロ、ひだ)
  • 前歯の間に過剰歯がある

①の上唇小帯が強直している場合は、歯と歯の間に上唇小帯が食い込んでいるので歯が真ん中に並ぶことができません。上唇小帯を切除してあげる必要があります。歯医者さんを受診してください。
ご自分の周りに上の前歯がスキッパな方はいませんでしたか?そういう方は、この病名かもしれません。この時期に上唇小帯を切除してあげるだけできれいな歯並びが手に入るかもしれないので、当院では積極的に切除のご案内をしています。

②の過剰歯であった場合は、摘出してあげないと前歯の歯並びに非常に大きな影響を与えます。ぜひ歯医者さんで取ってもらいましょうね。