よく患者さんのお母さまから質問があります。こんなところからはえてきちゃった、とびっくりされて歯医者に来院されます。
心配ですね。

下顎切歯(1番)の舌側萌出について

A脱落前の1番の舌側萌出

こういう状態で下の前歯が萌出してくる子がいます。
保護者の方は「大丈夫なんだろうか?」と心配になりますね。
結論から申し上げると、ある程度は大丈夫ですが、叢生(ガタガタな歯並び)にならないとは断言できません。

6歳になると、第一大臼歯(6歳臼歯)とともに切歯(下の真ん中の前歯)が萌出してきます。
下あごの前歯(切歯)では、このようにはえてくることもあります。

切歯の歯軸角について

大人の歯とこどもの歯では、上下の前歯のなす角度に違いがあります。
さきほどの1番が舌側から萌えてくるのはこれが関係しています。
こどもの上下の前歯はまっすぐにはえてきますが、おとなの上下の前歯はナナメにはえてきます。なので、下の大人の前歯が、舌側から萌出してくるわけです。
大人の前歯があまりにも舌側のところに位置していると、こどもの歯の根っこのほっぺた側がうまく吸収されず、こどもの歯と大人の歯が混在することがあります。

こどもの歯と大人の歯が混在することによって、必ず叢生になるわけではありません。歯の並ぶ位置とは、くちびるや舌との力の均衡により決まります。歯の並ぶスペースがあれば、こどもの歯と大人の歯が混在していてもこどもの歯を抜いてあげればきれいに並びます。

小児歯科学(医歯薬出版)参考