患者さんには、いつも口をすっぱくして「血がでるのはよくないことです」と説明しているのに、私自身も口の中から出血してしまったのです。色々言い訳は出てきますね。前の日はハミガキをちょっとさぼっていた、とか奥歯は歯間ブラシが入らなくて、、、とか。私は、だいたい半年の頻度で、大先生に口の中をチェックしてもらっています。診察チェアーにゴロンと横になって口を「アーン」。。。

大先生:「ここにプラークがついてるよ、歯間ブラシちゃんと入れてる?」

あら、確かにプラーク(歯垢)がしっかりついています。指摘された場所は、左下奥歯の間(左下67間)と左上奥歯の間(左上67間)でした。
フロスは寝る前に必ず全箇所にちゃんと入れています。先ほどの指摘された左上の部位には、歯間ブラシはまだ隙間が狭いから入らないと思っていました。

①左上67間への歯間ブラシの挿入はまだ入らないからしなくていいと自分で勝手に思いこんでいた訳です。年齢を重ねたため歯と歯の間の隙間が少し広くなっていたのです。
自分自身そんなことは思ってもみなかったので、指摘された箇所に、歯間ブラシを(最初は)無理矢理入れてみたのです。すると、入る!でもちょっと痛いし、血がドバーっとでてきました。ビックリですね。大丈夫かしらと(歯医者でも思うのです)思いながら1週間くらい歯間ブラシを入れ続けました。その後、出血は全くなくなり、歯間ブラシの挿入時の痛みもなくなりました。
 (ホッとする。)

②そして、 指摘された左下67間には歯間ブラシはちゃんと入れていましたが、サイズが細すぎたのが出血の原因でした。今までは3Sサイズでしたが、結構太いMサイズでちょうどよくなっていました。歯間ブラシを効率悪く使用していたわけです。

歯間ブラシは血が出るからやらない?

歯間ブラシを全く使った事がないという方がほとんどだと思います。
初めて使うと、挿入部の歯肉からとってもたくさん血がでます。
大丈夫だろうかと心配になりますが、出血するにはちゃんと理由があります。

歯の周りに汚れがついていると虫歯になるのはもちろんですが、歯周病にもなります。
歯と歯の間の汚れが残っていると(たとえ目に見えない汚れでも)、そこにバイキン(口腔常在菌である歯周病菌)が定着します。人間の体はそのバイキンを異物と判断するので、免疫細胞がやっつけにかかる訳です。それで出血するのです。この状態がずっと続くと、最後に、生体は骨を溶かしてしまうという訳です。(歯の周りの骨が溶ける=歯周病)

歯間ブラシでのお掃除が継続されると、
「汚れがつかない→バイキンがつかない→免疫細胞が来ない→つまり、出血がない→歯茎は正常になる」
という訳です。とにかく使用をやめずに1日1回でいいので毎日継続する事が大切です。

時々、1日1回歯間ブラシを入れ続けているのに痛みが続き出血が続く方が稀にいらっしゃいます。たいていは、初めて歯間ブラシを使った方におこります。正式に文献で調べた訳ではないのですが、私の主観だと、腫れている歯茎から正常な歯茎に変わっていくサイクルの途中に、歯間ブラシで少し傷つけてしまっているという印象です。
そうなった場合は、一旦、歯間ブラシのサイズを痛くない程度の細いサイズに変えて、2週間程度お掃除を続けてください。その後、また適切な(=太いサイズになるはずです)サイズに、痛くない程度にそーっと入れてみてください。そーっと入れて「痛くない」のがポイントです。

「歯間ブラシを入れるのが痛い」のが継続している場合は、ただ単に歯茎を傷つけている可能性もあるので、もう一度歯医者さんで指導を受けてください。

ちなみに、「歯茎が弱っているから出血する」って思っていませんか?歯茎が弱るって、何でしょうか。出血するのは歯肉に炎症があるから(歯肉炎や歯周炎)です。70歳になっても適切に磨いていれば、「歯茎は弱ることはありません」。ただし、白血病やワーファリンを内服している等、全身状態がよくない方は出血しやすくなる事があります。

歯間ブラシは隙間が広がるからやってない?

歯間ブラシを使用していなかった方が急に綺麗に歯間ブラシでお掃除できるようになると、このようにおっしゃられる事があります。一旦は、歯間ブラシの使用が習慣になった方が気にされることが多いです。
結論から申し上げると、歯間ブラシを入れたから広がった訳ではありません。本来の歯茎の隙間が炎症性に腫れている歯茎のせいで埋まっていただけなので、歯間ブラシのせいで歯茎が広がった訳ではないです。

「歯間ブラシのサイズが太すぎるから隙間が広がる」というのもあまり原因としては考えにくいと思います。なぜなら太すぎる歯間ブラシはそもそもが歯間ブラシ自体が曲がってしまって入らないからです。

また、たまにフロスの反対側についている尖った方やつまようじを使用している方がいますが、歯科医学的にはほとんど意味がありません。歯につく汚れは、基本的には粘着性のプラーク(ネバネバのもの)ですので、歯面にこすりつけて磨かなければ、鶏肉などの大きいものが取れるだけで歯自体は磨けていないからです。

また、ウォーターピックも効能については、私は懐疑的です。(あくまでも一個人の意見です)そんなものを購入するのであれば、1本数十円の歯間ブラシで十分ではないかと思ってしまいますね。

デンタルフロスも省きません

歯間ブラシの磨けるところとデンタルフロスの磨けるところは少し違います。なので虫歯予防のためにもデンタルフロスも必ず1日1回は入れましょう。

【参考記事】

歯間ブラシの使い方(サイズ・タイプ)について
歯間ブラシはL字型がおススメ 歯間ブラシのブラシ部分の根本まで全部ぐいっと挿入する

歯間ブラシの挿入方向について
歯間ブラシの挿入方向について のどの真ん中に向けるイメージで入れてみる

歯周病を治すには歯間ブラシだ
歯周病になるのは、歯ブラシで磨けるところではなく、歯間ブラシで磨くところがほとんど?

デンタルフロスも省きません

結論「何もなくても歯医者に行った方がよい」

自分で磨けていると思っているその歯みがき方法は実はまだまだ磨けていないのかもしれません。